筆者らはダイズの祖先種であるツルマメがダイズ病害の伝染源になりうるかその病原菌を調べました。それまでに5種のツルマメ寄生菌が報告されており、すべてダイズの病原菌と共通種だったからです。2014年、本州以南の各地で採集したツルマメの病変部から菌類の検出と分離・同定を試みました。その結果、50種が得られそのうち24種は国内外で知られているダイズの病原菌などと共通種でした(佐藤ら,2017).すなわち、Cercospora kikuchii(紫斑病菌*)、Cer. Sojina(斑点病菌)、 Colletotrichum destructivum(炭疽病菌*;図)、Corynespora cassiicola(褐色輪紋病菌*)、 Epicoccum nigrum(病名未提案)、Gibberella avenaceaおよびFusarium sp. (the F. oxysporum species complex) (赤かび病菌)、Oidium (Pseudoidium) sp. (うどんこ病菌)、Peronospora manshurica(べと病菌*)、 Phakopsora pachyrhizi(さび病菌*:後の項目参照)、Phytophthora sojae(茎疫病菌*)、Septoria glycines(褐紋病菌*)、Thanatephorus cucumeris (AG-1 1A) (葉腐病菌*) の13種は国内の病原菌と共通種で、Alternaria alternata、Botrytis cinerea、Fusarium fujikuroi、Phytophthora cryptogeaなど11種が海外で報告されている病原菌でした.*を付した8種はダイズの重要病原菌であり,これらが寄生するツルマメは伝染源となる可能性があります。これを確かめるため、上記のツルマメ寄生菌が実際にダイズの各病害を起こすか実証する必要があります。現在、筆者が指導した学生がツルマメ寄生菌をダイズに接種し病原性について調べていますが、すでに数種の予備接種で発病が見られました。
引用文献
佐藤豊三・加賀秋人・古屋成人・土屋健一・大貫正俊.2017. ダイズ祖先種ツルマメの病変部より分離・検出された菌類.日本微生物資源学会誌 33: 9ー18.