病害防除は手っ取り早い増収・増益

 前回のお話した通り、無防除の作物生産では病害が発生することは当たり前であるにも関わらず、病害の発生はマイナスと考えられがちです。つまり、病害防除は減収を0に近づける技術と勘違いされることが多いのです。そうではなく、無防除で病害が発生する状態が0ということに留意すべきです。有効な防除をしたらしただけ収量も品質もプラスになると考えるのが妥当です。それでは、具体的に防除によりどれだけプラスになるのでしょうか?
 やや古い実験ですが、日本植物防疫協会が様々な作物を17年間病害虫・雑草防除をほとんどせずに栽培し、減収率と減益率を調べました(日本植物防疫協会、2008)。その結果、ウメを除く主要果樹5種の減収率は平均57~97%、減収プラス品質低下による減益率は78~99%であり、キャベツ、レタス、ホウレンソウの減収率は平均67~100%、減益率:69~100%となり、果樹や葉菜類で特に損失が顕著であることが分かりました。一方、水稲やトウモロコシ、大豆では減収率は平均24~30%、減益率:28~34%で比較的損失が小さいことも明らかになりました。果菜類と根菜類は概して果樹・葉菜と水稲・ダイズの中間的な数値となりました(図)。いずれにせよ、病害虫や雑草の防除は24~97%の増収、28~100%の増益を支えているとみることができます。こう考えるとより低コストで効果の高い防除技術を開発・普及する、あるいは利用する意欲も湧いてくるのではないでしょうか?

図.無防除栽培における各作物の減収・減益率

引用文献

日本植物防疫協会 2008. 病害虫と雑草による農作物の損失.日本植物防疫協会 40 p.