これまで説明してきた化学、生物、物理、耕種の4種類の防除技術を矛盾しないように合理的に組み合わせて、環境にやさしい技術、持続的な農業生産を継続していくための総合化技術として体系化したのが総合防除(総合的病害虫管理、IPM(Integrated Pest Management))で、環境保全型農業のキーテクノロジーとして位置づけられています。目指すところは「環境保全型農業」、すなわち農業生産上の個別技術を見直し、経済レベルでも持続可能で、安定した防除効果が可能となるように体系化した防除手法を構築し、持続的な農業生産に貢献することです。まさにヘソディム(HeSoDiM)の概念そのものなのです(図)。
図 環境保全型農業の目指すところ
さて、実際に取り組もうとすると,土壌条件やこれまでの作付け経過以外に,個々の経営条件,ほ場・施設が立地している社会環境条件等が相互に複雑に関与します。したがって、個別技術の導入かかる費用対効果がプラスになること、組み立てた総合防除体系を実施できるだけの経営体制、労働力、労力配分なども確保されなければなりません。総合防除を実践する上で最も重要なのは、自分で今できる個別技術を組み合わせた技術体系を、自分流に組み立て、それを継続して実施していくことです。農水省のホームページに最近の各都道府県におけるIPM実践優良事例が掲載されています。参考になる事例が満載ですのでぜひ参照してください。
参考文献
對馬誠也(2014):日本における総合防除と IPM:多様な農業に対応した様々な戦略の必要性.日植病報 80(特集号),188–196.
IPM実践優良事例:農水省消費・安全局植物防疫課