köppenの気候区分

 (2022年4月執筆/2022年7月加筆修正)  

 中学校や高校の地理の授業で学習する内容の中に,köppenの気候区分があります.これは,気温と降水量という2つの気象要素から対象地域を区分するものです.この気候区分から,たとえば,本州の大部分の地域は「温帯湿潤気候(Cfa)」に区分されます.世界に目を向けると,東アジアやアメリカ合衆国南部,オーストラリア東部など大陸東岸地域が,この「温帯湿潤気候(Cfa)」に属しており,これらの地域には,夏は高温で多雨・多湿という気候的な特徴があります.また,これらの地域の土壌が肥沃であることから,コメやトウモロコシの主要産地となっています.このようにköppenの気候区分から,その地域の農業に関する情報を得ることができるのです.ここでは,köppenの気候区分が,なぜ農業に関して有用な情報源となるのかについてお話しします.

 köppenの気候区分は,de Candolle(1874)植物生理に基づいて類型化された植物種の分布に基づいて,気象要素として入手しやすい気温と降水量から地域を区分したものです.そのため,植物類型に基づく「高温(地)植物」,「乾燥(地)植物」,「中温(地)植物」,「低温(地)植物」,そして「極低温(地)植物」が卓越して分布する地域は,köppenの気候区分では,それぞれ「高温地植物界(熱帯,A)」,「乾生植物界(乾燥帯,B)」,「中温地植物界(温帯,C)」,「低温地植物界(冷帯,D)」,「極寒地植物界(寒帯,E)」に対応します(参考:矢澤大二,1989,気候地域論考,PP738,古今書院).
 また,de Candolle(1874)の詳細な植物類型に対応して,köppenの気候区分では,熱帯雨林気候(Af),熱帯モンスーン気候(Am),サバナ気候(Aw,As),地中海性気候(Csa,Csb,Csc),温帯冬季少雨気候(温帯夏雨気候,Cwa,Cwb,Cwc),温暖湿潤気候(Cfa),西岸海洋性気候(Cfb,Cfc),冷帯湿潤気候(Dfa,Dfb,Dfc,Dfd),冷帯冬季少雨気候(冷帯夏雨気候,Dwa,Dwb,Dwc,Dwd),ツンドラ気候(ET),氷雪気候(EF),ステップ気候(BSk,BSh),砂漠気候(BWk,BWh)などに細分化されます.このように細分化されたköppenの気候区分を図1に示します.

 細分化されたköppenの気候区分では,年平均気温と年降水量,最暖月と寒月平均気温のほかに,月平均気温が10℃以上の月数,月降水量の季節変化,そして乾燥限界値や最少雨月降水量という,気温と降水量から定めた指標によって地域が区分されています.これら指標は,類型化された植物種の生理的な特徴を説明するの適した要素であることから,植物種が生育する気候条件と読み替えることができます.このことから,köppenの気候区分は,作物の栽培可能性や生育期間など農業に関する有用な情報源にもなるのです.köppenの気候区分と農業区分の比較を図2に示します.この図から,ヨーロッパでは,köppenの気候区分と農業区分がよく対応していることがわかります.さらに,köppenの気候区分と作物の原産地との関係を図3に示します.この図から,作物の原産地の気候条件から,その作物の栽培条件,あるいはその栽培可能性を検討することができることがわかります.

図2.ヨーロッパにおけるköppenの気候区分と農業区分との比較
新編 詳解地理B(二宮書店)P249,251より
図3.Köppenの気候区分と主要野菜の原産地
AgriWebより

 このように,農業にとって有用なköppenの気候区分ですが,気候学の研究者からは,
1.気温と降水量という限られた気候要素だけでは,その地域の気候の特徴を十分に説明できないのではないか
2.植物の分布には気候以外の要素から影響を受けており,これをこの気候要素だけで説明できるのか疑問が残る
などのことが指摘されています.
 また,köppenの気候区分は,地球スケール,大陸規模スケール,あるいはアジアやヨーロッパという州スケールを対象にした地域区分です.これを,日本の地域スケール,たとえば,北海道地方のスケールを対象とすると,北海道は温暖湿潤気候(Cfa)と冷帯湿潤気候(Dfa,Dfb,Dfc)にしか地域区分をすることができません.このため,この気候区分によって得られる気象情報は,北海道地方での作物の栽培管理を考える場合,大雑把すぎることは認めざるを得ないことは事実です(図4).

文献
Candolle, A de (1874): Constitution dans le régne végétal de groupes physiologiques applicables a la géographie botanique ancienne et moclerne. Bihliothèque Universelle et Revue Suisse. Arck. d. Sci. phys. et Natur. Nouv. Période 50, Genève, 5-42.