サクラの開花

 今年(2024)年、東京では3月29日にサクラの開花が発表されました(NHK首都圏ナビ)。これは、平年(1991年から2020年までの平均)より5日、統計を取り始めてから最も早かった2023年より15日遅い開花です。気象庁によると、「今年の開花が遅かったのは、2月後半から開花日(3月29日)まで気温の低い日が続き、つぼみの成長が遅れため」とのことでした。
 ここで、今年の冬から初春の(2023年12月1日から2024年3月31日まで)の日最高気温、日平均気温、日最低気温の変化を示します(図1)。

図1.2023年12月1日から2024年3月31日までの日最高気温、日平均気温、日最低気温の時間変化.

 横軸は日付(2023年12月1日から2024年3月31日まで)、縦軸は気温(℃)、赤線は日最高気温、緑線は日平均気温、青線は日最低気温を示します。また、蜜柑色に塗られた部分は、日最高気温、日平均気温そして日最低気温が平年値よりも高い期間、青色に塗られた部分は、平年値よりも低い期間を示します。これを見ると、12月から2月中旬までは日最高気温、日平均気温そして日最低気温が、それぞれ、平年よりも高い日が多かったことを示しています。ことから、2023年の冬は暖冬傾向だったことがうかがえます。このころに出されたサクラの開花予想では開花日は3月20日とされていました(日本気象協会 2024年桜開花予想(第2回))。これに対して、2月下旬から3月下旬までは青色に塗られた部分が多いことから、日最高気温、日平均気温そして日最低気温が平年よりも低い日が多かったことわかります。気象庁の発表通り、2月下旬から3月下旬に低温の日が多かったこと、そして休眠覚醒後のつぼみの生育が遅れたことが、サクラの開花が遅くなった原因となったと考えられます。
 さて、サクラの開花発表は、東京都千代田区九段北にある靖国神社境内にあるソメイヨシノを基準しています。このソメイヨシノは、「標本木」と呼ばれており(生物季節観測の概要)、これに5~6輪の花が開いた最初の日をサクラの開花日と定義しています(生物季節観測指針東京管区気象台)。昨(2023)年のサクラの開花日は3月14日、今(2024)年は3月29日と年によって大きく変動しています。そこで、気象庁生物季節観測からわかった1953年から2024年までの約70年間に関して、サクラの開花日の年々の変化を図2に示します。

図2.1953年から2024年までのサクラの開花日の年々の変化.

 縦軸には年、横軸にはサクラの開花日をとりました。この図から、サクラの開花日は、年によって大きく変動していることがわかります。また、1990年以前では平均して約3月30日であった開花日が、1990年以後には年とともに早くなり、3月22日前後となっています。そして、2020年、2021年、2023年では3月14日と記録的に早い開花日となりました。これに関して、1951年から2024年までの2月と3月の月平均気温の年々の変動(図3)を見ると、この間、長期的に見るとはそれぞれ、約2.4℃、2.9℃高くなっています。このことから、サクラの開花日がこの70年間で早くなったのは、気温の長期的な上昇によるものと考えられます。また、2月と3月の気温は大きく変動していることがわかりますが、この気温変動がサクラのつぼみの生育に大きな影響を与え、開花日の変動を大きくしているようです。

図3.1953年から2024年までの2月と3月の月平均気温の年々変動.

 試しに、2月と3月の月平均気温とサクラの開花日の相関をとると図4になりました。

図4.2月と3月の月平均気温とサクラの開花日の相関.

 サクラの見頃にあわせて「桜祭り」を開催する事業者にとっては、3月の気温の変動が大きく、開花日の予想を難しくしていることは、その準備作業の行程に大きな影響を与えているのではないでしょうか。