北海道の気候区分

(2022年4月執筆/2022年7月加筆修正) 

 de Candolle(1874)植物の類型化に基づくköppenの気候区分は,地球スケール,大陸規模スケール,あるいはアジアやヨーロッパという州スケールに対応するものです.ですから,日本の地域スケール,たとえば,北海道地方を対象にすると,国内では広いと感じる北海道地方ですが,温帯湿潤気候(Cfa)と冷帯湿潤気候(Dfa,Dfb,Dfc)の4つに気候区分されるだけです.このような理由で,北海道地方の作物栽培管理でこのköppenの気候区分を利用すると,この気候区分によって得られる気象情報は大雑把すぎることは認めざるを得ません.

 北海道の気候区分など,日本の地方スケールで気候区分を行う場合は,ほかの区分(分類)方法を考える必要があります.
 井上ほか(2017)は,北海道内の気象庁アメダス地点における月平均気温と月降水量の平年値(1981年~2010年の30年間の平均値)を用いて,クラスター分析による気候区分を行いました.これによると,北海道地方は少なくとも5地域に区分される
とのことです(井上ほか(2017),図2)。
 区分された5地域の特徴は、月平均気温・月降水量の平均値によるハイサーグラフ(hythergraph)で示されます(井上ほか(2017),図3).みなさんはこのハイサーグラフを高校地理で学ばれたかと思います.これは、縦軸に月平均気温,横軸に月降水量をプロットし,このプロットした点を時間の経過とともに結ぶことで、通年の気候の季節変化を表現した散布図です.これにより,各月の気温と降水量の特徴,すなわち寒暖と乾燥湿潤の状況がわかります.このため,このハイサーグラフは,その気温や降水量の季節変化が直感的に理解できるので,農業生産者にとって,作付け作物の栽培可能性や作付け体系などの情報を詳細に取得することができます.

文献
Candolle, A de (1874): Constitution dans le régne végétal de groupes physiologiques applicables a la géographie botanique ancienne et moclerne. Bihliothèque Universelle et Revue Suisse. Arck. d. Sci. phys. et Natur. Nouv. Période 50, Genève, 5-42.

井上 聡・奥村健治・牧野 司・広田知良(2017):クラスター分析とハイサーグラフによる北海道の気候区分.生物と気象,17,64-68.