2023年6月2日から3日につくばで降った大雨の特徴

 6月2日から3日にかけて、つくばでは梅雨前に珍しく大雨に見舞われました。2日未明に降り始めてから3日昼前に降り終わるまでに、つくば市南部にあるアメダス観測地点(アメダスつくば)に設置された雨量計では286.5mmの降水量を記録しました。つくばの6月1ヶ月間の降水量の平年値は131.8mmですから、この2日間だけで平年値の約2.2倍の雨が降ったことになります。また、2日1日だけで174.5mmの降水量を記録しましたが、これは1921年から統計を取り始めて以来、第3位の記録です。そのため、3日の朝、つくば市中心部の大通りの普段から水たまりができる場所には、何台かの車が立ち往生していました。このような光景を見たのは、つくばに来て30年経ちますが、初めての出来事です。車社会であるつくばの大雨の時には、車による通行はリスクを伴うことを肝に銘じなければならないことに気付かされました。
 おとなりの土浦でも、市東部にあるアメダス観測地点(アメダス土浦)では296.0mmの降水量がありました。土浦では6月の月降水量(平年値)が123.5mmとつくばよりも少ない土地柄だけに、この雨で記録した日降水量の187.5 mmと日最大1時間降水量の38.0 mmは、統計を取り始めた1976年以来、第1位の記録となりました。このように、今回の大雨は、通常、つくばよりも降水量が少ない土浦のほうが多く降ったのです。そのため、土浦の方が大雨による被害もまた大きく、私がお世話になっている農家さんでも、ハウスや露地の畑の多くが水につかったそうです。そして、長時間水没した、ハウスの大玉トマトやきゅうりは葉がしおれ、根にもダメージを受けたとのこと。また、田畑が浸水すると疫病の発生のリスクが生じることから、じゃがいもは収穫を前倒したり、枝葉を刈りとったりするなど、始末が大変だったそうです。
 今回の豪雨は、普段はあまり降らない地域で多く降ったことが特徴です。防災科学技術研究所では、「防災クロスビュー: 令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号」というページを設けて、「24時間積算降水量の稀さ」を日本地図上に示しています(図1)。この図は、日本国内を5kmの格子(メッシュ)状上に分け、各メッシュで、今回の降水量がどれぐらいの期間に一度起こるか(再現期間:稀さ)を、過去29年間の降水量をもとに推定したものです。

図1.24時間積算降水量の稀さの分布(2023年6月3日06:00現在)
(防災クロスビュー: 令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号、大雨の稀さ(まれさ)情報を改変).

 これを見ると黄色から紫色に着色された地域が和歌山県から愛知県、静岡県、そして埼玉県南部から茨城県県南地域を経て、海浜公園で有名なひたちなかまで続いています。このうち、黄色はこの地域で24時間に降った雨が2~5年に一度は起こる降り方であったことを示しており、橙、赤と色が変化するに従って、その年数は長くなり、紫色に地域では100年で1度は起こるか、起こらないかの降り方であったことを示しています。先ほどお話ししたつくばと土浦では、24時間の積算降水量が50年から100年に一度の「稀さ」に属すことがわかります。ですから、今回のつくばと土浦の雨は、ここでずっと住み続けたひとが、この時期一生に一度だけ、体験する可能性のある大雨だったのです。
 さて、温暖化か進んでいる現在、大雨の発生回数が増えているという報告があります(気象庁ホームページ)。これによると、全国51地点における日降水量100mm以上そして200mm以上の年間日数(51地点の平均)は106年間で有意な増加傾向があり、最近30年間(1977~2006年)と20世紀初頭の30年間(1901~1930年)を比較すると、日降水量が100mm以上の日数は約1.2倍、200mm以上の日数は約1.4倍に多くなったとのことです。これは、100mm以上の日、あるいは200mm以上の日の再現期間が短くなったことを示しており、「稀」にしか経験したことがなかった大雨を経験する回数が多くなることを示しています。このことから、将来は、日本各地、どのようなところでも、大雨の対策が欠かせなくなることが予想されます。