湿度のおはなし(その2.絶対湿度)

 トマトやイチゴなどの作物をハウスで栽培している生産者の方々は、湿度を表す方法として絶対湿度を用います。これは、1立方メートルの大気に含まれる水蒸気量(g/m3)で表します。また、ハウスの作物に、いつ、どのくらい水を与えるかを判断するためには、下記の式で示した飽差(VPD、g/m3)を用います。

ここで、 χsは飽和水蒸気量(g/m3)、χaは実際の水蒸気量(g/m3)です。作物の体内は80~90%が水分であるため、気孔付近の水蒸気量は飽和水蒸気量とほぼ等しいと考えることができます。ですから、この飽差VPD(g/m3)は、作物の気孔付近の水蒸気量と周囲の大気中の水蒸気量の差を表し、作物がどのくらい水分を失う可能性があるかのを示します。
 この飽差を利用して水蒸気量の管理を行うために、ハウスなどの施設栽培では以下の飽差表(表1)を活用しています。

表1.飽差表(単位:g/m3

 表1では、気温(℃)と相対湿度(%)から求められる飽差(g/m3)の値を青色、空色、橙色、そして白色に区別しています。ここで、青色の飽差値は、ハウス内の飽差は適正であり、ハウス内の水管理には問題がないことを示しています。また、空色の飽差値は、水管理が許容できること、橙色の飽差値は、急激な気温上昇や湿度の低下が起こると作物の気孔が閉じる可能性があるため、水管理に注意が必要であることを示します。これに対して、橙色の飽差値の上に広がる白い飽差値は、ハウス内の乾燥のために作物の気孔が閉じていることが考えられ、作物への湛水など乾燥に対する対策が必要であることを示しています。反対に、空色の飽差値の下にある白い飽差値は、ハウス内の大気が湿潤なため作物の気孔は開いているものの、蒸散がほとんど行われていない状態と考えられます。ハウス内の気温の高い場合には、作物に高温障害が生じる可能性があるので、換気してハウス内の湿度を下げることが必要です。
 このように、飽差は、ハウス内の水管理にとって重要な指標となります。