平年値

(2020年4月執筆/2022年7月加筆修正)

 今年の冬(2019年12月から2020年2月まで)は,東日本では平年よりも+2.2℃,西日本では+2.0℃など,全国的に気温がとても高く,記録的な暖冬となりました.新潟県でも,新潟では5.6℃,相川では6.7℃,高田では5.4℃と,平年よりもそれぞれ,2.2℃,1.9℃,2.1℃高い気温でした.これに対して,降水量は,新潟では342mm(平年比65%),相川では360.5mm(98%),高田では1119.5mm(101%)と,所によって平年並かかなり少なくなっています.ところが,新潟県の冬の風物詩である降雪量に注目すると,新潟では4cm,相川では5cm,高田では67cmです.平年の降雪量は,それぞれ195cm,107cm,537cmですから,平年比では,それぞれ4%,5%,12%ととてつもなく少ないことがわかります.このように,その年の気温や降水量は,平年の気温や降水量と比較して,どれくらい高かったが(低かった)(差)か,どれくらい多かった(少なかった)(比)かによって特徴づけられます.そして,気温と降水量を特徴づける基準となる値,すなわち平年の値を「平年値」とよびます.さて,この「平年値」とはどのような値なのでしょうか.

図1 2019年12月から2020年2月までの気温と降水量(平年との比較)
気象庁報道発表「冬(12~2月)の天候(令和2年3月2日)より
ただし,平年値は1980年から2010年までの気候値.

 気象庁では,「平年値」を西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値を定義しており,10年ごとに更新しています(気象庁 気象観測統計指針, P119).ですから,現在(2020年4月)使われている「平年値」は、1981年から2010年の観測値から算出した平均値で,2011年5月18日から使用しています.この「平年値」ですが,実は,私たちは小さい頃からこれに慣れ親しんできているのです.小学校,中学校,そして,高等学校の地理の気候の単元で,横軸に月が示され,これに伴う気温の変化を折れ線グラフで,降水量の変化を棒グラフで示した図を見たことがあるかと思います.これは,雨温図と呼ばれるもので,この図から,気温と降水量の1年の変化が一目瞭然に知ることができます.この時,この気温と降水量は「気候値」とよばれ,この値はその土地のもつ天候や大気の平均的な状態,すなわち,気候の特徴を示していますが,この「気候値」こそ「平年値」なのです.
 「平年値」は10年毎に更新されますから,「気候値」もまた更新されます.私が高等学校の地理の教科書(1970年代)でお目にかかった雨温図は,1941年から1970年の「平年値」から作成したもの,そして今の子供たち(2010年代)が使っている雨温図は,1981年から2010年の「平年値」から作成したものとなります.この雨温図がどのように変化したのかは,図書館の本棚で埃をかぶっている昔の「理科年表」からわかります.ここで,高田に関して1941年から1970年の雨温図を理科年表から再現し,1981年から2010年の雨温図と比較してみましょう.

図2 新潟県高田の雨温図(1941年から1970年までと 1981年から2010年までの気温と降水量の月変化)

 1941年から1970年の降水量を示す青色と1981年から2010年を示す水色の棒グラフを比較すると,高田では,12月,1月,2月の冬,そして9月で,降水量が減少することがわかります.とくに冬の3カ月に注目すると,1981年から2010年の降水量は200mm近く減少しているのがわかりますが,これは,じつに7月の月降水量に匹敵する値です.また、高田の天候で特徴となる降雪量に関していえば(1960年以前では降雪量は測定値とされていないのでわかりませんが),1961年から1970年までの10年間における年平均の降雪量726.4cmでしたが,2001年から2010年までは192.6cmと,4分の1近くまで減少しているのです(気象庁観測資料より).
 1981年から2010年の高田における気温の年変化を示す赤い折れ線は,1941年から1970年を示す橙色の折れ線よりも0.17~1.13℃,年平均では約0.6℃ほど高くなっています.とくに3月の変化が大きく,高田では雪解けと春の訪れが早くなっていることが推測されます.12月から2月の冬の期間中でも約0.6℃変化していますが,この値は,冬の高田が40年間に緯度にして約0.5°,距離にして約55km南下したことに匹敵するのです.

 このように,「平年値」は変化します.

(参考)

 2022年5月19日から,「平年値」は1991年から2020年の30年間の平均値を用いることになりました.基準となる「平年値」が変化することで,図1に示した令和2年冬(2019年12~2020年2月)の平均気温平年差(℃)と降水量平年比の分布が下図のように変わりました.

令和2年3月2日報道発表 冬(12~2月)の天候
  本紙[PDF形式:78KB]別紙[PDF形式:574KB]
日本の気温・降水量・日照時間分布図(季節)
日本の天候