日本一暑い所

(2016年10月執筆/2022年7月加筆修正)

 日本一暑い所はどこでしょう.気象庁が発表している歴代全国ランキング「最高気温の高い方から」によると,現在(2022年6月30日)までのところ,埼玉県熊谷(2018年7月23日)と静岡県浜松(2020年8月17日)の2地点で観測された41.1℃が日最高気温1位の値であることから,この熊谷と浜松が日本一暑い所とされています.
 日最高気温が1位になると,そのことが,テレビや新聞,インターネットなどによって,全国的に報道されるので,日最高気温1位を記録した気象観測地点のある市町村は一躍,有名になります.なかには,これを利用して地域おこしを企てる市町村も現れます.ここでは,これにまつわる出来事をご紹介します.

JR江川崎駅にて(2013年8月21日 著者撮影)

 2013年8月1日,高知県江川崎で日最高気温41.0℃を記録しました.この値は,当時1位の記録であった40.9℃よりも0.1℃高かったことから,この時点から「高知県江川崎が日本で1番暑い所」となったのです.ところが,この記録に「物言い」がつきました.「物言い」を付けたのは日最高気温が1位から2位に転落した埼玉県熊谷です.熊谷が物言いをつけた理由は,江川崎の値は「アメダス地点」の測定値であるのに対して,熊谷の値は「地方気象台」の測定値であるというものです.
 地方気象台アメダス地点で,気温や風向・風速,日照時間,降水量などの気象要素を測定する機器が設置されている場所を観測露場(または,露場)と呼んでいます.そして,この観測露場は,周辺の建造物などの影響を受けずに気象要素を測定するために,一辺の長さが20m以上,少なくとも600m2(約180坪)以上の面積が必要とされ,地表面も30m2以上の面積に芝生(天然芝あるいは人工芝)が植えられ,風通しがよく,水平であることが条件となっています(日本気象協会(1988):地上気象観測法).熊谷のように地方気象台にある観測露場はこの条件を満たしているところがほとんどです.しかし,アメダス地点観測露場は,地表面は芝生などが植えられていますが,その面積はおおむね70m2(約21坪)とされています(気象庁(1998):気象観測の手引き).
 このように,アメダス江川崎熊谷地方気象台を比較すると,観測露場の広さに大きな違いがあり,測定条件が異なることから,「アメダス江川崎の気温が高いとはいえない」のではないか.これが物言いのついた理由です.

 たしかに,観測露場の面積が広い方が気温の測定にとって望ましいのですが,70m2以上の面積が確保されており,また,気象測器の設置部分(7×5m程度)には人工芝は張られているアメダス江川崎に関しては,気象庁は観測露場の広さによる気温の観測への影響はないことを確認しています(気象庁(1998):気象観測の手引き).
 また,アメダス江川崎は,四万十川の左岸,西向きに広がる河岸段丘面にあります.そして,低層の小学校,中学校などの教育施設の園庭内に立地しており,アメダス地点としては環境に恵まれた地点だと考えられます.また,風通しも良く,涼しそうな地点ですので,アメダス地点観測露場の広さが異なることで,気温が高温になるとは考えられません.

 これが,当時,高知県江川崎が「日本で1番暑い地点」として認められた理由です.そして,この日最高気温が1位という記録は,熊谷地方気象台で40.1℃を測定された2018年7月23日までの4年と357日間,続きました.

(参考)

 現在,歴代全国ランキング「最高気温の高い方から」では,地上気象観測法(1988)の条件を満たした気象台や気象台と同様の観測装置を使う測候所気象観測所特別地域気象観測所での測定値には「*」が付されています.ですから,埼玉県熊谷(2018年7月23日に観測)と静岡県浜松(2020年8月17日に観測)の値,41.1℃は気象台で観測された測定値ですので「*」が付されています.