凍霜害のあと栽培現場でよく聞かれる言葉があります。「うちの畑はやられたけれど、すぐ隣の畑はほとんど被害がなかった」、あるいは、「同じ畑の中の低い所、畝の向きが違うところだけ被害が出た」。このような経験は決して珍しいものではありません。しかし、天気予報やアメダスの最低気温を見ているだけでは、こうした違いを説明することはできません。
アメダスや気象官署の気温は、一定の基準を満たした環境で測定されています。それは、地域の空気の状態を代表する重要なデータとなるからです。しかし、凍霜害が起きる夜に問題となるのは、「その地域の空気が何°Cだったか」ではありません。夜間に、作物のすぐ近くの、ごく低い高さのところの空気がどれだけ冷えたかという、きわめて局所的な現象です。
放射冷却は、圃場全体を一様に冷やす現象ではありません。むしろ、場所ごとの差を強調する現象です。わずかな地形の違い、周囲の樹木や建物、地表面の状態や被覆の有無など、こうした要因が、「夜空にどれだけ熱が逃げるか」、「冷えた空気がどこにたまるか」を左右します。その結果、同じ圃場内であっても葉温や芽温は場所ごとに異なります。
重要なのは、このときの温度差は決して大きくないことです。数十メートルの違いで、気温の差は1°Cにも満たないことが多い。それでも、作物体の温度が「凍霜害が生じる温度」を越えるかどうかで、結果は「被害が出る」、「出ない」に分かれます。凍霜害が「わかりにくい現象」と感じられるのはこのためです。差は小さいのですが、結果は極端なのです。
では、どのような要因が、この「圃場ごとの差」を生み出しているのでしょうか。次回(2月21日掲載予定)では、地形や周囲環境といった要因が、作物表面の冷え方にどのように影響するのかを、具体的に整理していきます。

図3.放射冷却が強い夜に,同一圃場内でレタスの状態に差が生じる様子(概念図).同じ圃場内であっても,地形やわずかな高さの違いにより,レタスの状態が異なる.凍霜害は,気温ではなく,作物の冷え方によって左右される.