凍霜害の発生を左右する要因はいくつもありますが、その中のひとつに地形があります。なぜなら地形は、夜間にどこが冷えやすいか、冷えた空気がどこへ動くか、そしてどこに溜まりやすいかを決めているからです。放射冷却は、作物表面が夜空に向かって熱を失う現象です。しかし、その結果として生じる冷たい空気の動きは、圃場の地形によって大きく左右されることがあります。
夜間、地表付近で冷やされた空気(冷気)は、周囲の暖かい空気よりも重くなります。そのため、斜面を下り、低い場所へとゆっくり流れていきます。これを冷気の流れ(冷気流)と呼びます。わずかな傾斜であっても、冷気は確実に動き、低地や窪地に流れ込み、そこで溜まります。このような場所では、気温が下がるばかりでなく、葉温や芽温もまた大きく下がりやすくなります。

図4.晴天で風の弱い夜における斜面上の冷気の流れ(概念図).夜間,地表付近で冷やされた空気は重くなり,斜面を下って低地へと流れ(冷気の流れ:冷気流),そして,窪んだ場所に溜まる(冷気の溜まり)。この冷気の移動と溜まりが,圃場内での冷え方の違いを生み,凍霜害の発生場所を左右することもある.
重要なのは、この現象が圃場の広さよりも小さいスケールで起きていることです。数十メートルの違い、わずかな段差、畝の向きや配置など、こうした小さな地形の違いが、冷気の流れや滞留のしかたを変えます。その結果、同じ圃場内であっても、被害が出る場所と出ない場所が生まれます。凍霜害が「運」に見えるのは、この現象がもつ空間スケールの小ささと、温度差のわずかさが重なっていることも原因の1つです。
地形が放射冷却の冷え方の大枠を決める一方で、被覆や地表面の状態は、その冷え方を調整する要因として働きます。裸地か、被覆があるか。土壌が乾いているか、湿っているか。これらは、地表面の放射特性や熱の蓄え方を変えます。ただし、被覆や地表面の状態は、地形による冷気の流れそのものを根本的に変えることはできません。あくまで、地形という条件の上で、冷え方を変える役割を担っています。
防風林、樹木、建物、垣根など、これらの周囲環境は、冷気の流れ方に影響を与えます。冷気の流れを遮れば、その上流側で冷気がたまりやすくなります。一方で、適切な開口部があれば、冷気は流れ去りやすくなります。周囲環境は、放射冷却そのものを止めるのではなく、冷えた空気の行き先を変える要因だと捉えると理解しやすくなります。
ここまで見てきたように、圃場の冷え方は、地形という変えられない条件の上に被覆や周囲環境といったことも原因として考えられます。
次回(2月26日掲載予定)では、これらの要因を踏まえたうえで、放射冷却がおこると予報されたときに、凍霜害に対してどのように向き合えば良いのかを整理していきます。